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日本臨床検査学教育学会学術大会への参加と学生発表の優秀発表賞の受賞

2018.8.22

平成30年8月16日~18日に第13回の日本臨床検査教育学会学術大会が札幌の北海道大学学術交流会館で実施され、希望学生32名と参加いたしました。

本校では初めて、この様な全国学会の学生発表(学部セッション)に3年生の工藤裕基君が発表(日本海裂頭条虫感染の1症例報告)しました。学部セッションでは優秀発表賞(8名)が設けられていますが、多くの大学生に混じり、見事、工藤君が受賞の栄誉を与かりました。(工藤君、おめでとうございます。)

大会名:第13回 日本臨床検査学教育学会学術大会
発表演題:日本海裂頭条虫感染の1症例報告
演者:北海道医学技術専門学校 3年 工藤裕基(旭川凌雲高校卒:現永嶺高校)

抄録

日本海裂頭条虫感染の1症例報告

工藤 裕基(くどう ゆうき)
北海道医学技術専門学校

はじめに

日本における寄生虫症は戦後の公衆衛生の向上により、大きく減少したと言われている。しかし、寄生虫は多種多様であり、近年、アニサキスなどといった寄生虫感染が問題となっている。その中で裂頭条虫症は発生頻度が高く、年平均で40例前後の症例が国立感染研究所に報告されている。日本海裂頭条虫は、サケやマスなどに寄生する幼虫(プレロセルコイド)を経口摂取することにより感染する。その日本海裂頭条虫症の1症例を経験することができたため報告する。

症例および方法

症例:10代男性(筆者本人)。排便時に肛門から長い「きしめん様」の虫体が下垂しているのを確認した。そこで、寄生虫種を同定するために①糞便検査(直接塗抹法および集卵法)、②片節の形態観察、③遺伝子検査(Multiplex PCR)を行った。症状は軽微な下痢のみで、腹痛は認められなかった。虫体確認より数か月前にサケを生食していたことから、サケが感染源として推察された。

結果および考察

直接塗抹法では虫卵を確認することは困難であったが、集卵法より60~70×40~50μmの楕円形、淡褐色、小蓋がある虫卵が確認できた。また、排出された片節を観察した結果、生殖器様構造がみられた。以上のことから、裂頭条虫と推定し、日本海裂頭条虫または広節裂頭条虫を疑い遺伝子検査(Multiplex PCR)を行った結果、日本海裂頭条虫と同定された。検査終了後、プラジカンテル20~30㎎/㎏を内服し下剤により虫体を排出し治療を行った。排出された虫体から頭節を確認することはできなかったため、経過観察を行うこととした。その後虫体の排出および虫卵は検出されなかったため根治されたと考えられた。

結語

今回、日本海裂頭条虫症を身をもって経験したことで、寄生虫症が身近なものであると再認識することができた。寄生虫症の診断は一般に虫卵検査が重要であり、虫卵の特徴やライフサイクルを判断し、寄生虫を推定、鑑別するという、これまで学んできた寄生虫検査法の基本が如何に大切であるかを痛感した。